開館15周年記念として、今展ではビーズ研究家 加納弘勝氏の貴重なコレクションを展示。
透明な胎に二つ青の帯を置き、2匹の金魚を入れた江戸とんぼがある。黒の胎に、春を伝える伝統的な萌黄色の、大きめな斑点を配した玉もある。
粋で繊細な和玉は、創意に満ち、どれも豊かな個性をもっている。江戸とんぼを見たり手にすれば、玉の個性と美さに見とれ、玉への親しみと懐かしさをおぼえる。
個性豊かな江戸の玉は、これまで朽ちることなく、見失われることなく、過ごしてきた時の経緯のなかで、玉を作った人、身につけた人、そして運んだ人たちに出会った。これらのひとたちの思いや技を探り、さらには、玉の生きた江戸の社会への「つながり」を探ることで、玉への親しさと懐かしさに納得して近づけるだろう。
○江戸とんぼを個々に探るだけでなく、モチーフやサイズ、色など、いくつかのまとまりとして探ってみたい。
○近世和玉の製作地域(江戸や大阪など)と、多数の玉が運ばれ、比較的最近まで残っていた集積地域(アイヌ地域)に区分けして探ってみたい。
集積地域では、思いは色濃く「願い」として身に着けられ、18世紀末ころにはシトキを見て、「価をかまわず所望せしに、古より持ち伝え、この器ばかりは・・・交易にせざりし物」とされたという(古川古松軒 『東遊雑記』)。玉の交易は、製作地域(国内外)と集積地域を繫ぐ諸相を具体的に語り、製作地域の間で営まれた人の交流や硝子に関わる風俗の伝播をいきいきと語ってくれる。
江戸とんぼは、「小さな胎」に「粋で活気ある江戸のかおり」を凝縮させ、「大きな社会や世界」を映し出ている。
加納弘勝 |